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そのような観点で、番組で紹介された事例2については、私は医師として問題意識を持ちました。ご本人の意思を尊重し、穏やかな最期に導いた救命救急センターの医師は素晴らしかったと思います。しかしその患者さんが、「他の病院から搬送されてきた」ということに対し、疑問に感じたのです。

番組からは詳細は分かりませんでしたが、搬送前の病院で看取りができるはずです。そして、その病院の医師や看護師は、患者さんが終末期であり救命が難しい状態であると把握していたと思います。にもかかわらず、救命救急センターに転送したということは、元々の病院が責任を回避して問題を先送りしていることではないでしょうか。

この患者さんが元々いた病院の医師や看護師は、しっかりと患者さん・ご家族と信頼関係が築けていたのでしょうか。患者さんの状態を、丁寧にご家族に説明できていたのでしょうか。そもそも、救命救急センターは、高機能な医療を必要とする救急患者の命を救うための医療施設であり、終末期の看取りの場所ではありません。生かすための救急医療と、生を終わらせる終末期医療とは、全く方向が逆なはずです。この事例では、救命救急センターの医師が終末期の医療について悩みを持ちながらも、患者さん・ご家族と向き合い、最善の対応をしている姿が描かれていました。

しかし、このような看取り搬送が増えれば、救命救急センターがパンクし、助かるべき命が救えないという事態にもつながりかねません。また、終末期の患者さんにも高度な薬や機器を使えば、命を伸ばせるかもしれませんが、それでは、死に往く人に本来必要のない苦しみを与えることになるかもしれません。終末期にある患者さんに安らかな死を迎えていただくためには、患者さんが過ごされてきた医療・介護施設でお看取りできることが一番だと思います。

健育会の病院・施設においては、前述した通り、患者さん・ご家族の気持ちに寄り添い、最期まで責任を持って対応して欲しいと考えています。

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