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まず前半に宮本礼子先生から「日本の高齢者終末期医療の現状」という演題でご講演を賜りました。

宮本礼子先生

宮本礼子先生の話の中では、なぜ日本で高齢者の延命が行われるのかということに関して、「1.我が国にある延命至上主義」、「2.本人がどのように死にたいかという意思を表明しない」、「3.周囲も本人の意思を聞こうとしない」、「4.医師が遺族から延命措置を怠ったと法的責任追求が行われる恐れ」、「5.診療報酬や年金など社会制度の問題」などの理由を挙げられていました。また何より「自分は受けたくない、と思うような延命措置を物言わぬ高齢者に行なっていること」が倫理的に問題があるとおっしゃっていました。

健育会グループ平成29年度医師研修会

私は、医師はまず、医療現場に今までになかった「新しい役割がある」ことを認識しなければならないと考えています。旧来の医学部教育では、医療の役割は異常状態を正常に戻すこと、そしてできるだけ延命に努力をすることであると教えてきました。このことが先ほどの「我が国にある延命至上主義」という話にもつながっています。しかし、高齢者の終末期では、若人や一般成人とは別の視点が不可欠であり、何よりも私は『豊かで苦痛の少ない、人間の尊厳が尊重される人生の最期をサポートする』ことが医療に求められていると考えています。

また「老いることは自然であり、命には限りがある。しかし、それが受け入れられない家族がいる」ということもおっしゃっていました。確かに実際の現場では、患者さんが大往生を実現できるような最適な医療判断をご家族がすることはなかなか難しいのが現状です。このお話を伺いながら、昨年より様々な機会を通じて健育会グループの医師に伝えていますが、「医師には死を受け入れられない家族を納得させる見識、人間力が必要」ということを改めて感じました。

健育会グループ平成29年度医師研修会

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