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その後、審査委員長の長谷川先生から次のようなコメントをいただきました。

「いろいろな形で審査させていただきましたが、選定には大変苦労しました。TQM活動発表セミナーも回を重ねるにつれて、どんどん内容が良くなり競争が激しくなっています。
釈迦に説法だと思うのですが、TQMというのはPDCAサイクルで進めていきますが、何が一番難しいかをご存知でしょうか。一番難しいのは、Pの前です。問題点をどのように見つけるかが、実はすごく難しいのです。健育会として、今年はこのようなことを重視しましょうというようなヒントやサジェッションはあるにせよ、実は日々の業務の中では、たいてい夕方になると疲れているし、それで終わってしまう。そこに疑問を持ってどこかに改善の余地があるのではないかということを見出す。実はPDCAに入っていないところが実は一番難しいのです。
その次はどこか知っていますか。それはPDCAの一番最後、定着の部分です。問題点がはっきりして、短期間で改善に向けて一生懸命取り組んで、やりきって実績を上げるのは、そんなに難しくないのです。1年頑張ればなんとかなるのです。それが3年後も5年後も安定して、同じような成果を上げ続けるような仕組みを作り上げるのは大変なんです。ですからTQMの後がもっと大変なのです。たとえば、1年前、2年前にここで賞を取られた取り組みがどうなっているのか、審査員としてはちょっと聞きたいなと思います。それはいつかの機会ということで、今回のセミナーでご発表いただいた成果は、まだ短期の成果です。これからそれが定着して組織としてどう活かしていくかも大切です。
TQM活動での評価ポイントはいくつかあります。今回の審査でポイントとなったことは6つです。

審査委員長の長谷川先生

1つ目は課題の発見です。例えば石巻健育会病院は、与薬の確認手順をルール化したのにインシデント数がゼロにならないというトレンドからの逸脱と、アンケートによる調査を契機に活動に取り組まれました。様々な分析から問題点を発見することが大切ですから、テーマの設定が思いつきからだと少し弱いと感じています。
2つ目は、多職種の関わりです。業務改善の一環としてのTQMなので、多職種が関わり、病院全体にその取り組みを広げる準備ができているかということもポイントとして評価させていただきました。
3つ目は、目標の達成です。竹川病院はいい発表をいただき評価も高かったのですが、最後に目標を達成できていなかったことから、選外となった経緯がございます。目標もたまたま達成できたのではなく、きちんとなぜ達成できたのかを合理的に説明できることが重要です。そうすることで、取り組みに再現性が生まれます。そのような意味では、オアシス21やケアポート板橋では、目標達成についての検証が行われていました。
4つ目は、中間評価です。中間評価をやって問題点を洗い出してそれを解決するというのは、非常に合理的で優れた手法です。石巻健育会病院では、中間点検を行い、取り組みの足りない部分を改善していました。
5つ目は、波及効果です。取り組みを行うことで、たくさんの波及効果があるのは良い活動だと感じています。オアシス21では、たくさんの波及効果がありました。

審査委員長の長谷川先生そして6つ目は、定着です。1年の活動で定着までの評価は難しいですが、定着は大切なことだと思います。
受賞された活動は、これらの評価ポイントにおいて、高い評価を得られた活動です。今年も発表を聞きながら、非常にみなさんのやる気を感じ、審査にも力が入りました。来年は、今のこの健育会の高いレベルで要求されている事項を見直しして活動を進めてもらえたらと思います。」

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