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講演要旨

2007年 スウェーデン ストックホルム視察

  • 2007年から毎年、様々な国を訪れて、終末期の現状を見て来た。
  • 当初は、終末期医療は何も興味がなかった。妻と一緒にスウェーデンのストックホルムで施設を見学した際に案内くださった先生に、私は呼吸器が専門のためたまたま「誤嚥性肺炎については、スウェーデンではどうですか?」という質問をした。すると先生はきょとんとされて「ほとんど問題にならない」とおしゃっていた。つまり無理に食べさせずに看取るので、誤嚥性肺炎になる前に亡くなっているということだった。
  • スウェーデンでは、施設に入っても特に治療は行わない。骨折などの時には入院したりするが、すぐに施設に戻ってくる。そして、ほとんどの方が施設で亡くなっている。
  • また高齢者の医療は緩和医療中心であり、「亡くなるとわかっている人に治療行為をやるのはナンセンスではないか」「最期を迎えようとしている人に血圧を測ったり尿量を測ったりするのも意味がないでしょう?」と言われた。もちろん施設では、点滴や経管栄養もしないで、自然な経過で亡くなっていくということだった。
  • また、高齢者に血液透析を行うのもとんでもない、人工呼吸器も当然ながらしないということだった。

2008年 オーストラリア メルボルン視察

  • スウェーデンで驚いて、次の年となった2008年はオーストラリアのメルボルンへ行った。
  • いくつかの施設を見て回ったが、オーストラリアでも口から「食べるだけ飲めるだけ」で亡くなる方が多いと言うことで、そのような状況になると、だいたい2週間で亡くなるということだった。
  • 寝たきりの老人はもちろんいない。お話を伺うと、2008年の段階で「十数年前までは経管栄養の人はたくさんいたが、今は一人もいません」と言うことだった。
  • 施設には看取りの部屋があり、死の直前まで語らい合い、家族と一緒に看取る。
  • オーストラリアの場合は、政府が率先して高齢者介護施設における緩和医療ガイドラインを発表している。
  • 日本の場合は、緩和医療病棟に入れる患者さんはガンとエイズだけであるが、WHOの定義では緩和医療は「生命を脅かす全ての疾患が対象である」とされている。オーストラリアにおいては、WHOの定義通り全ての疾患が対象となっている。
  • ガイドラインには、「無理に食事をさせてはいけない」「栄養状態改善のための積極的介入(経管栄養や人工栄養など)については、これは倫理的に問題がある」「脱水で死なせるのは悲惨と思い点滴を行うが、緩和医療の専門家は、点滴や経管栄養を行うことはむしろ有害と考える」「最も大切なことは、入所者の満足感であり、点滴を行うことではない」とこのようなことがはっきりと書いてある。
  • この文章を見ると、日本の現状とは正反対のことを、オーストラリアでは国を挙げて推進しているということになる。

2008年 オーストラリア メルボルン視察

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