最新レポート

続いて、リハビリテーション部門8題の研究発表が行われました。

リハビリテーション部門 研究発表

【座長】 ねりま健育会病院 院長 酒向 正春先生

  1. 当院入院患者におけるブリッジ力とADLの関連性

    いわき湯本病院 石川 大成

    いわき湯本病院 石川 大成

    地域包括ケア病棟の入院患者においてブリッジ力とADL能力に関連を明らかにした。入院中の患者20名、平均年齢85.4±5.8歳、呼吸・循環器系疾患がない者を対象とした測定したところ、入院患者においても、先行研究同様にブリッジ力とFIMの間に関連性があることが示唆された。ブリッジ力であれば、開始時から患者の安静度、離床段階に左右されずにリハビリの効果を経時的に分かりやすい形で提供できると考えられた。今後ブリッジ力の評価の精度を向上させるために、対象者数の増大、経時的な変化や日常生活自立度別による検討などを進めていきたい。

  2. 大腿骨近位部骨折リハビリテーション介入初日
    平行棒内歩行評価の有用性について

    西伊豆健育会病院 山口 良平

    西伊豆健育会病院 山口 良平

    大腿骨近位部骨折患者の歩行獲得の予測因子として、年齢、認知機能、病前移動、術後週単位での歩行能力などが報告されてきたが、リハビリテーション介入初日の歩行能力を評価し検討した報告は見当たらない。在院日数短縮が求められる中、私たちは早期に患者の予後予測をし、他職種へ提供する必要がある。そこでリハ介入初日に平行棒内歩行獲得者の特徴を把握し、歩行獲得の予測に有用かを検討した。結果、術後1週目の歩行能力を予測するため、介入初日の歩行評価は有用であることが示唆された。

  3. 高齢者の非特異的腰痛と身体機能との関係性について

    熱川温泉病院 谷口 徹

    熱川温泉病院 谷口 徹

    先行研究では非特異的腰痛の発症因子として体幹伸展筋力、体幹伸展可動域や体幹伸展持久力などが報告されている。しかし、これらが高齢者に対しても発症因子となるのか疑問を持ったため、高齢者の非特異的腰痛と身体機能との関係を明らかにした。腰痛あり群は、なし群と比較し体幹伸展筋力、体幹伸展可動域が有意に低下しており、先行研究を支持した結果となった。一般的な体操教室等での測定項目は腰痛に対し相関がなく、腰痛に対する機能低下を発見困難である可能性が示された。体幹伸展筋力と体幹伸展可動域のみ有意差を認めたことから上記2項目を測定し、プログラムを検討する事で腰痛予防が出来る可能性が示唆された。

  4. 脳卒中後重症上肢麻痺に対する新しい治療戦略

    ねりま健育会病院 飯塚 徳彦

    ねりま健育会病院 飯塚 徳彦

    上肢近位側の重症麻痺に対して、フォースカップル構造に注目しトリガーを棘上筋、電極位置を三角筋のモーターポイントに設定した新しいIVES治療戦略を施行したところ、劇的な上肢近位側麻痺の改善効果を認めた。上肢近位側の重度麻痺に対して、IVESを肩のフォースカップル構造(棘上筋−三角筋)に1日8 時間で2 週間装着し、運動療法とADL指導を実施した。結果、上肢麻痺、筋緊張、上肢使用頻度や質に著明な改善を認めた。その機序は、IVES治療による上肢筋活動回復と上肢使用習慣化、そして脳の可塑性によると考えられた。本法は重度上肢麻痺に対する有効な機能回復の治療戦略と考えられ、棘上筋の筋活動を残した多くの症例に適応があるため、本治療戦略を広めていく意義は高いと思われる。

  5. 視覚と身体図式の誤差
    健常者と脳卒中患者の傾向と違いについて

    石巻健育会病院 齋藤 大地

    石巻健育会病院 齋藤 大地

    対象物へリーチする中で対象物の距離が遠い状態で手を伸ばし姿勢を崩してしまう事があるが、視覚と身体図式に関する報告は殆どみられない。そこで、健常者と脳卒中患者における外空間の認識と身体図式に差があるかについて検討を行った。屈曲方向では、誤差が生じやすい事が示唆された。屈曲方向から目標物が近づいてきた場合、前方に机とスポンジ板があり周辺視野からの情報を得られ難くなった可能性がある。また、脳卒中群では屈曲と外転の測定値の差に有意差は認めなかった。

  6. 身体的フレイル患者の在院日数に関連する因子の検討

    石川島記念病院 斗澤 咲季

    石川島記念病院 斗澤 咲季

    高齢入院患者が多い当院においてフレイルを呈し、さらに疾患により心身機能が低下している患者が少なくない。超高齢患者ではFIM運動項目や受傷前ADL、退院時歩行能力や排泄コントロールが自宅退院に影響すると言われているため、当院における身体的フレイル患者の在院日数に影響する要因を歩行能力やADL能力に着目し検証した。在院日数には認知機能とトイレ動作能力の関連が示唆された。また、在院日数が短い患者ほど介護保険を必要としていないことがわかり、早期に介護保険取得、調整を行うことは在院日数を短縮する可能性があることがわかった。

  7. 部分免荷による平地歩行とトレッドミル歩行が
    大腿骨近位部骨折患者の歩行に 与える影響

    花川病院 柚原 千穂

    花川病院 柚原 千穂

    免荷トレッドミル(以下BWSTT)に関して先行研究においては整形疾患を対象とした歩行速度改善の報告があるが、免荷平地歩行路(以下BWSOT)に関する報告は少なく整形外科疾患に対してBWSTTとBWSOTを比較した報告はない。当院入院の大腿骨近位部骨折患者に対しBWSTT・BWSOT介入前後での歩行パラメータ変化を比較し使用方法を検討した。結果、BWSTTとBWSOTの介入による本研究対象者の歩行速度改善率に有意差は見られなかった。術後早期にはBWSOT(歩行器などの補助具使用可)を使用、歩行レベルがあがった場合はスピードの変更など難易度設定を行えるBWSTTを使用するなど、対象と時期により使用機器を選択できる可能性が示唆された。

  8. 同居家族の介助可否に着目した
    回復期リハビリテーション病棟における
    転帰先に関わる因子の検討

    竹川病院 佐藤 圭一郎

    竹川病院 佐藤 圭一郎

    先行研究において検討されていない、自宅復帰に関係する家族が介助可能なFIM下位項目を明らかにすることを研究目的とした。自宅復帰群で低値だったのは年齢/待機日数/在院日数/在院率であり、高値だったのは入退院時FIM/ 実績指数/自宅復帰指標であった。また、移乗ベッド/移乗トイレ/移乗浴室の3項目の介助可否が自宅復帰に影響することが考えられた。移乗ベッドのオッズ比が高値であったのは歩行不能であった場合に実施する頻度が高い動作であることや、現在の介護保健サービスや福祉用具では支援が十分でない可能性が示唆された。そのため同居家族が自宅での移乗方法を行えるよう入院早期から検討する必要があると考えられた。