文芸誌「文学界」に掲載された「最後の一ヶ月間の延命治療はやめませんか」という対談が波紋を広げているという記事が、2019年2月11日朝日新聞 朝刊に掲載されていました。
「文学界」に掲載された対談内容については様々な批判記事が書かれているように、知識不足や未熟な点が否めないと私も思いましたが、私は医学や介護の専門誌ではなく「文芸誌」に、しかもこのような若手論客の終末期に関する対談記事が掲載されたということに驚きを感じました。対談の記事やその批判記事、そして今回私が読んだ朝日新聞の記事についてもそうですが、このように大きな紙面で扱われるくらい終末期医療への国民の関心が高まってきているということだと感じたからです。
私は以前より、日本の社会が抱えている問題として、平均寿命と健康寿命に差があり、この差が生み出す様々な問題を解決していかなければいけないと公言してきました。もちろんそのためには健康寿命を延ばすことが第一ですが、同時に日本の高い平均寿命がご本人にとって本当に幸せな寿命なのか?ということも考える必要があるということも常々考えています。
人生の最終段階にある患者さんに高度な医療を施すことは、時としてご本人の苦痛につながることもありますし、意識が戻らずに植物状態となってしまうこともあります。その場合、大きな心労と経済的負担がご家族にのしかかってくることもあるのです。患者さんの中には「どのような手段を使っても、どのような姿になっても生きていたい」と思う方、また「回復の見込みがないのであれば、穏やかに死を迎えたい」と思う方もいらっしゃると思いますが、私はどちらの意思も尊重すべきだと考えています。ここで重要なのは「本人の意思」なのです。