Vol.208獨協医科大学で特別講義を行いました。

医療法人社団 健育会 理事長竹川 節男

vol208

2019年12月11日(水)、私が特任教授を務める獨協医科大学(栃木県下都賀郡壬生町)で、特別講義を実施しました。私の母校でもある同校を訪れるのは、2014年に教職員を対象に行った講演以来5年ぶり。同校副学長で内科学(神経)の教授を務められている平田幸一先生が私と学生時代の同級生だったこともあり、今回は平田先生の下で臨床実習中の5人の5年生と対談形式の講義を行いました。

今回の講義で私がテーマにしたのは、故武見太郎先生が残された言葉である「医療は医学の社会的適用である」でした。これは、長年日本医師会の会長を務められ、日本の医療に多大な貢献をされた武見先生の言葉の中でも、私が最も好きなものです。学生たちは今、医学を学んでいます。医師になって自分の専門の医科ができたら、それに関するどんな病気でも治せるようなスキルを身に付けなければいけません。しかしそのスキルをどのように使うかは、社会に応じて変わります。

医療には、お金がかかります。医療費に関しては、昔から大きな議論の的になってきました。「医療費亡国論」という言葉があるほどです。国ではありませんが、北海道にあった夕張市立総合病院は、大きな負債を抱え、夕張市が財政破綻する一因になりました。市が破綻すると、病院だけではなく水道や上下水道など市が提供するあらゆる行政サービスが停止することになります。また、医療費が原因ではありませんが、かつてソ連が崩壊したときには、モスクワ市民が行列を作って、パンとスープの配給を受けていました。その映像を見たときに、国が滅びることが現実にあり、絶対に国を滅ぼしてはいけないと強く思いました。医療は、使い方を誤ると、国を滅ぼす可能性があるのです。

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