Vol.255 管理職に自らの経験を語りました

管理職とはいえ、みなさんの多くはプレイングマネージャー、実際にはご自身も業務に就きながら、部下を管理する大変な立場だと思います。上司と部下双方からそれぞれの要望が届くでしょう。
まず管理者として続けていくにあたって重要となるのは“マネージメントの仕事に興味を持てるか、おもしろいと思えるか”。自分でこなせることも他人に任せる立場です。部下が思い通りに仕事をしてくれたことに、喜びを感じられたことがあるかはひとつのポイントになるでしょう。


健育会における管理とは「与えられた権限でルールを決めた」上で「部下に守らせる」ことです。
まずは管理者としてルールを決めること。ルールについてたずねられたときに「前からの慣例です」といった言い訳は通用しません。現状を見極めた上で、都度見直し、改良して対応してください。つまり「なぜこのルールを定めたのか」、理由を自分の言葉で説明できることが大切なのです。経済と同じく、医療にもイノベーションが必要だと考えています。常に革新的な考えを持って具現化しなければ、病院は進歩せず、輝きを失うでしょう。
さらにむずかしいのは、2つ目の「部下に守らせること」です。人を動かす方法に、明確な正解はありません。自分の背中を見せる人、しっかり仕組みを作る人など、それぞれの方法があります。自身の経験の蓄積によって身についていくものだと思います。


わたしが理事長に就任した約30年前、健育会には2つの病院がありました。当時は“公立病院はいい医療を行うが赤字、私立病院は利益が出るがレベルが低い”が常識でした。私立病院もがんばらなければ、将来の日本の医療の質は下がると考え、わたしは自分の病院で効率的でいい医療提供しようと提案しましたが、スタッフからは人手不足や技術面など「できない理由」ばかりが返ってきました。そこでわたしは「人材が足りない中、素晴らしい医療を提供することはむずかしいかもしれない。
しかし、同じマンパワーでも“他病院と比べて少しでもいい病院”は作れるのではないか」と話し、スタッフに納得してもらいながら仕組みを作っていったのです。
今期から日本ハムファイターズの監督に就任した新庄ビッグボスも、同じようなことを話していました。「このレベルで優勝は目指さない」と。“最高”のものではなく、今のメンバーでできうる“最良”を目指すことです。