今永先生によると、90歳以上の超高齢者の死亡者数がとても増えている現在、老衰で亡くなる人数も増えつつあり、今後医療介護の現場において老衰の診断やケアをどう行っていくかが重要な課題となっている、と問題提起されました。その上で、老衰は定義が難しく、適切な診断・治療が行われないまま診断が下されているケースや、過剰な検査や治療で患者のQOLが低下しているケースがあるとし、診断や治療の基準や考え方、注意点などについてお話しいただきました。まとめは以下の通りです。
- ・老衰の診断にあたっては、緩徐な状態の変化であるか、容易に改善できる可逆的な状態の有無の確認を行う。
- ・エンドオブライフ期においては、「食べる」ということをどのように考え支えていくかが重要。
- ・老衰における死亡診断書の記載の際は「修正ルール」を意識する。
続いて、日本航空の荻政二先生より「航空業界の安全の取り組み」についての講演がありました。
講演では、航空業界の取り組みとパイロットのトレーニングにおいて重要視される、「エラーを減らす取り組み」、「レジリエンスを高めることの重要性」、「能力を伸ばすためのトレーニング」という3つのテーマについてお話しいただきました。
エラーを減らす取り組みについては、チーム理論や飛行機事故におけるバイアス例、ヒューマンファクターズの原理を実例を交えて紹介されました。また、スイスチーズモデルをすり抜ける「想定外の危険」に対処するためには、個人の能力を上げることが重要であり、そのために必要なレジリエンス向上のためのパイロットトレーニングについても解説されました。医療業界にも役立つ、安全の取り組みを新たな視点からわかりやすくご指導いただきました。