次に医療法人財団 夕張希望の杜 理事長(歯科医)八田政浩先生より「歯科医から見た他職種連携」という演題でご講演を頂きました。
「歯科医から見た他職種連携」 講演要旨
- ■夕張は日本の縮図。夕張市破綻時、国の人口は1億2千万人、国債の発行残高は600兆円、高齢化率は22.5%であった。夕張市の人口は1.2万人、市の借金は600億円。日本の1万分の1である。ただ高齢化率は、日本が23%なのに対し、夕張市は43%と日本を先取りしている。
- ■夕張の医療は治す医療から予防を中心とする、多職種連携による「支える医療」にかえてきた。
- ■「支える医療」へ変えていくためには、慢性疾患や障害と共存しながらADLを維持し、QOLを確保することを主眼にした多職種が連携した医療へのパラダイムシフトが重要。
- ■調査によると高齢者の生き甲斐の第一位は「食事・食べること」。そのためには口腔ケアが大切である。
- ■単に生命活動を維持するためだけに食事をするわけでなく、高齢者がおいしく食べ、生き甲斐を感じて頂く。そのために多職種が連携。そして、本人の希望通りに食べれる喜びを得、自宅で家族に見守られながら安らかに亡くなられる。
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夕張希望の杜の特養における肺炎予防、口腔ケアと肺炎球菌ワクチンの取り組みをして、肺炎が減っている。
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日本の死因を見ると4位は肺炎で、毎年10万人亡くなっている。そのうち95%が65歳以上の高齢者である。
- ■夕張の老健100人を介入群、非介入群は近隣の老健で行った。介入群には専門家のチェックの元、しっかりとした口腔ケアと肺炎球菌ワクチンを接種。非介入群は通常の口腔ケアのみ。結果は一年間に非介入群は34件の肺炎発症、一方介入した群は2件のみだった。
- ■肺炎の治療には1名約50万円の医療費がかかるので、それだけで約1600万円の医療費削減になる。
- ■比較対照試験を終え、介入群で専門家のチェックをやらなかったら、次の年に肺炎の発症が2件から10件に増えた。誰かに監視されながら口腔ケアを行わないと効果が出ないと言える。磨いているけど、しっかり磨けていない。
- ■支える医療の普及、肺炎球菌のワクチン接種、口腔ケア、ピロリ菌除去などの取り組みを進めた結果、夕張市では、肺炎・胃がんの発症率が下がり、また一万人当たりの救急搬送件数も日本の平均値を下回った。
- ■医師、看護師、薬剤師、歯科医・歯科衛生士・介護職員など多職種が連携し、口腔ケアをしっかりと行うことが大切。家族と患者を支える医療が広がることで、医療費を削減し、高齢化問題への対応策となるだろう。
現場ですぐに活かせるような講演に、「口腔ケアの最大のポイントは?」「肺炎球菌ワクチン接種を行ってもらうためにどのような説明をしていますか?」など実質的な質問が寄せられました。