特に共感したのが、本の63ページにある「もし、病院や診療所で働くすべての人が、そこにある垣根を取り払って、全員が友人になり、一つのチームをつくれたら! 病院全体が穏やかであれば、患者にも医者にも驚くほどの治癒効果をもたらすはずだ」というドクターアダムスの思いです。
病院のスタッフが一つのチームになって、患者さんに愛情を持って親身に接すれば、患者さんの治癒効果を向上することにつながる、ということです。これはまさに、我々健育会が日頃から掲げている「ワンチーム」の考え方とリンクしています。
親身に対応することが患者さんに治癒効果をもたらすということは、すでにこれまでの経験で度々体感してきました。その一方で、医療もサービス業だから患者さんに気持ち良く過ごしてもらうために病院側も相手の立場に立つべき、という考え方には、医療の特殊性から少し違和感を感じていたのです。それがドクターアダムスの本を読んだことで、親身に対応するべき理由がはっきりと理論的につながったのです。
同じ医療行為をしても、私たちの接し方一つで患者さんの治り方は違ってきます。そうした研究発表はまだありませんが、患者さんが気持ち良く過ごせれば、様々なホルモンや自律神経のバランスが整えられて、病気に対する免疫力がアップし、快復につながると私は推測します
またワンチームには、我々病院スタッフだけでなく患者さんのご家族の存在も必要不可欠です。実際、私が研修医1年目だった頃、障害の残った患者さんがご家族の熱心な看病の末に半年間のリハビリで目覚ましい快復を遂げた姿を見て驚いたことがあります。最近も、私の小学校の同級生の奥様が脳出血で倒れられたのですが、同級生の熱心な看病で奥様の意識状態が改善され、ミラクル賞ともいうべき快復を目の当たりしました。
このように、私の中で新たに明確になった、愛情を持って親身な対応のできる病院こそが、まさに「光り輝く民間病院」であるという考えを伝えることが、巻頭の挨拶文を変えた趣旨であります。これからも、科学者としての冷静な目と、ご家族と病院がワンチームになって患者さんの快復をサポートしていくという両輪で、光り輝く民間病院を目指していきたいと思います。