2022年11月12日(土)、「2022年度 健育会グループ 医師研修会」が開催されました。会場はホテルオークラ プレステージタワー1階にある「平安の間」。各病院からの出席者が一堂に集まっての研修会は3年ぶりとあって、和やかに談笑する姿や東北大学大学院教授・海老原覚先生の特別講演に熱心に耳を傾ける姿が見られました。
会の冒頭、私が今回の研修の意義について話しました。
来年70周年を迎えるにあたり、私は「医師の役割とは何か?」をもう一度考え直しています。
患者は病気を治すためだけに病院を訪れるのではなく、その人の人生を豊かにするために来院するのだと思います。
医師の役割は病気を治すだけではありません。医師の指示のもとに医療スタッフが治療を行い患者の病気は治癒します。しかし、病気が治癒しても必ずしも患者の人生が豊かになるとは限りません。
30年前、私は健育会グループのMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を策定し「光り輝く民間病院グループ」というミッションを掲げました。企業はpurpose=(目的)が必要です。明確なpurposeがないと衰退していきます。30年前につくった健育会のpurposeは国に依存せず、民間の力だけで経営していくことです。
堅実な経営のもとにスタッフ全員が愛情をもって親身な対応を目指すこと、それがこれから健育会の目指す「光り輝く民間病院」です。改めて愛情をもって親身な対応とは、医師の皆さんにも考えてほしいと思います。
医師の使命は全身全霊で患者の治療をすることに間違いないが、患者は病気を治すだけではなく、人生を豊かにするために病院に来ていることを常に意識して接することが大切です。
医師は患者の病気を治すだけでいいのか、患者が何を求めているのか判断しないといけません。その根底が愛情をもって親身な対応だと考えます。
医師に求める愛情とは目の前の患者さんに愛情を注ぐことではなく、人間愛を持って患者の尊厳を平等に扱うことです。
私の好きな映画に『レナードの朝』があります。30年間昏睡状態にある患者が人としての尊厳を取り戻せるよう奮闘する医師の物語で、実話に基づいています。医師の想いは患者に伝わります。
患者には個性や様々なバックグラウンドがありますが、その人の人生が豊になるにはどのような判断が必要か医師は自分の役割を考え直してほしいと思います。
そして患者さんの思いに応えてこそ本当に親身な対応ができる医師であります。
それはどういうことなのかをこの研修をスタートラインとして考えていただきたいと思います。