臨床研究では「嚥下反射が起きやすい水の温度」を評価され、「冷たい水、または温かい水が嚥下反射を起こしやすい」という結論に。ご高齢者の食事も作りたてで熱さ冷たさを感じられるものが、「飲み込みやすく、美味しく、衛生的」であるとされました。
さらにご高齢者の食事には香辛料の活用が効果的であるとし、その研究の成果と臨床での具体的な活用方法をご説明いただきました。まず、海老原先生のチームは以前よりカプサイシンが嚥下反射を活性化させることを確認されており、毎食前にカプサイシントローチを患者さんに舐めてもらうことで食事が進むという報告がありました。メントールも嚥下反射を高めるため、メントール入りゼリーの商品化も実現。黒胡椒の臭いにも同じ効果があることを老人保健施設での臨床実験で確認し、黒胡椒のアロマチップも商品化されました。残念ながら、その後カプサイシントローチとメントール入りゼリーはメーカーで生産中止となりましたが、黒胡椒アロマチップは今も販売されているそうです。
他に口腔ケアと嚥下反射の関係や、嚥下機能を高める取り組みを後方施設や在宅へ伝達することの重要性、外来での呼吸リハビリにおける患者教育、合併症対策、認知症リハビリテーションにおける対象者の人間理解と尊厳回復の重要性などにお話が及び、最後にリハビリテーションにおける医師の役割について総括されるという非常に幅広く濃密な講演でした。
その後の質疑応答では、多くの先生から次々に具体的な質問が寄せられ、海老原先生から臨床研究を踏まえたアドバイスをいただきました。