さらに冊子では、集中力を引き出す方法として「若手の仕事の地図を広げる」ことが重要だと言っています。そのためには3つのポイントを満たす必要があります。これが今日の前半のポイントです。1つ目は「時間軸と空間軸の両軸を広げ、自分の目の前の仕事を位置づけること」。目の前のことだけでなく、その先の未来を照らして今やっている仕事の意味を常に伝え、刺激を与えるということです。
2つ目は「自分にとってすでに意味を感じられるものを確定すること」。 これをやって患者さんが良くなった、という事実を確定させてデータベースにしまわせるのです。 たまたまうまくいったからそのまま忘れてしまうのではなく、成功体験によって自信を持たせる。これにより次のステップ、次のチャレンジへと向かう姿勢が生まれます。
3つ目は「『べき論』だけでなく、自分を生かすという視点から機会の探索を楽しみ、課題を設定する」。こうするべき、と言っても今の人たちには伝わりません。押し付ければ、反感を買います。企業の成長や発展のためにやるべきことはもちろんありますが、それを押し付けるのではなく、「自分の持ち味を磨く」という視点で機会を与えるべきなのです。
中間管理職の皆さんは大変だと思います。ディレクターからは予算下がったと言われ、最近は営業利益率を上げろと言われる。部下に「こうしなさい、ああしないさい」と言いたくなりますが、そこはぐっとこらえて自分を生かすという視点でアドバイスしてみてください。皆さんの苦労は承知した上で、 あえて私は皆さんにやってほしいと思っています。
そして後半は「オンボーディング」についてです。オンボーディングとは、組織に馴染ませる力のこと。今年、病院で新人セラピストが何十人も辞めてしまいましたが、そういうことにならないよう、皆さんには来年入ってくる新人に早く馴染んでもらうための研修を今から考えておいてほしいと思います。新人は色々な悩みを克服して、まずは組織に馴染むことが大切です。そのために、2つのポイントがあります。
1つ目は「リアリティー・ショック」。新人は働き始めると、自分の思い描いていた理想と現実の差にショックを受けます。ですから皆さん上司には、新人が考えることを理解して対応してほしいのです。新人も専門学校を出て国家試験を合格していますから、ある程度自信を持って入ってきます。できて当たり前とまでは思っていなくても、やっぱり挫けてしまうんですね。私が研修医だった時の同期も、せっかく国家試験に合格して医者になったのに半年で2名も脱落してしまいました。
2つ目は、「プロアクティブ」。ショックを克服するだけでなく、次に繋がるための前向きな行動の基礎を築く研修が必要です。最も大切なことは上司のサポートです。そこで、ただ積極的に行動しなさいというのではなく、何をすればいいかを明確に示してあげることが大切です。皆さん既に一人一人のサポートはしていると思いますが、組織的なサポートである「チーム育成」も非常に重要です。育成会議を行って現状を把握し、盤石なサポート体制を作っていってください。
これらの環境整備をして、新人が早く馴染み、チャレンジできる文化を育てる。それができれば、健育会グループは民間ならではのスピード感とチャレンジ精神を全うして筋肉質な経営を実現できるはずです。70周年を超えて光輝く民間病院を目指すためにも、まずはスタッフがチャレンジできる文化を育てていってほしいと思っています。