次に聖路加看護大学 基礎看護学 准教授 大久保 暢子先生より「起きる看護ケアプログラム」という演題でご講演を頂きました。
「起きる看護ケアプログラム」 講演要旨
- ■起きることとは人が眠りから覚めて行動すること。目が覚め、身体が重力に逆らいおされている状態。すなわち、起きることとは日常生活行動の基本であり、起きることが人間らしく生きることに繋がる。
- ■生理学的機序からみた起きる意味。長期にわたって起きない(安静状態が続くと)と、‘重力による骨のカルシウム沈着が起らない’‘循環器障害:血圧の調整が出来ない’‘換気障害:横隔膜が下がらない’‘排泄障害:尿道、直腸への重力のかかり方の違い’‘空間バランス障害:三半規管の機能障害’‘脳幹レベルの反射を使わない’‘小脳の機能を使わない’など、さまざまな心身の機能が低下し、廃用症候群を起こす。
- ■つまり身体を起こすことは身体能力を維持し、脳への刺激を促し、人が生きることに繋がる。
- ■得られた様々な研究結果により、生理学的側面から考えると、‘身体を起こすこと’は廃用症候群を防ぎ、覚醒を促すと言える。
- ■但し、ただ起きることを目的にするのではなく、起こした後の次の動作に繋がる姿勢でなくてはいけない。次のステップを考えたうえで身体づくりを考える必要がある。
- ■そこで、‘起きる看護ケアプログラム’を作成した。急性期から慢性期を見越したケアが必要。重度の麻痺、意識障害であっても寝たきりにさせず、身体を起こすことは重要。慢性期で順調にリハビリできるよう、そのことを見越して急性期のケアを行う。
- ■まとめ「起きるということは心身面から非常に大切であり、人として当たり前のことである」「起きることから生活行動に繋がる」「患者が疾患を患った後も、急性期から起きるケアを提供し、慢性期に順調なリハビリが受けられるよう、生活行動に繋がる一連のプログラムとして起きるケアを提供することは重要である」。
現場ですぐに生かせるような講演に、質疑応答では多数の質問が寄せられました。