私からは理事長講話として健育会グループとはどういう組織かということについて話しました。その内容を紹介します。
今日は健育会グループの特徴や目指す方向を理解してもらうための研修です。特にミッション、ビジョン、バリュー(MVV)は企業の存在理由であり、皆さんの日々の仕事に深く関係する重要なことなので、きちんと理解してください。
「ミッション」とは、使命のことです。企業には、社会に貢献する社会的使命と利益を出して地域の人々の生活を守り、納税で国に還元する経済的使命の2つの使命があります。かつて、病院は経済的使命を果たす必要がないと考えられていましたが、私は経済同友会に入ってこのままでは日本の財政が立ち行かなくなると知り、経済的使命を設定しました。
こうした使命を果たすため、どういう組織になるべきかという理想の組織像が「ビジョン」です。また、それぞれの病院が実際の目標とすべき理想像です。それを実現するためには関わっている人たち(クライアント)が望んでいること、価値「バリュー」を提供することが皆さんの仕事です。
今から30年前、私が先代から引き継いで理事長職に就任した際、自分が健育会グループの理事長になるということは、どういうことかを真剣に考えました。当時、私には3つの選択肢がありました。大学病院で臨床医として患者さんを診ると同時に、大学病院で研究も行っていました。その2つを捨てて、民間医療法人の経営に入るということは自分や世の中にとってどういう意味があるのか真剣に考えたのです。
その時、世の中は民営化の機運にありました。日本は戦後、国営企業が先導して経済を発展させましたが、成熟社会になって政府がお金を出して産業を育てることが難しい時代になっていました。JRは昔、国営で国鉄と呼ばれ、大きな赤字を垂れ流していました。国営は、国は潰れないという思い込みから経営に甘さが生じます。そこで中曽根総理が「このままだと国が滅びる」と民活を行い、大成功させました。その後も郵政民営化など、民活がどんどん進みました。
そんな中、民営化を進める際に作られた規制改革委員会が出した答申に「光り輝く日本」という言葉が登場しました。そこで私は理事長として、民間として医療を支える「光り輝く民間病院」という使命を掲げました。
当時医療は聖域で、レベルの高い医療を行う国立病院は赤字を出しても税金で補填すればいいという常識がありました。しかし私は、それはおかしなことであり、効率的で質の高い医療は絶対実現できるという確信を持っていて、実現しようと考えました。赤字垂れ流しの公立病院はどんどん民営化され、安定した経営基盤の上で日本の医療を支えるサポートをするのが民間である我々のミッションです。