次に病院理念についてお話しします。病院理念とは「いい病院とは何か?」を共有するためのものです。「光り輝く病院」を作ると言っても、限られた経営資源、病院の規模、診療機能、地域の特性を踏まえた上で、それぞれの病院理念というものができてきます。そして自分の病院の病院理念を描く時に、みんな同じ絵が描けることが効率的な病院経営につながります。目指すべきところに人的資源と資金を集中して、理想の病院を作り上げていくことが重要です。そしてビジョンは、クライアントを心豊かにする病院グループになること。「健育会グループはみんなが心豊かになるグループだね」と言われた時に、我々の使命は全うされ、世の中に本当に貢献できると私は確信していますし、それが私のライフワークでもあります。
では、クライアントは何を求めているのでしょうか。患者さんは質の高いサービス、ご家族は安心、地域には地域貢献、取引先の方々は納得して信頼できるという病院、職員の皆さんにはやりがい。こうした価値を提供することでクライアントを心豊かにする病院が生まれます。そして私が考える質の高い医療とは、高機能病院や大学病院のような難しい手術ができる病院だけではなく、患者さんが求めるものを適切に提供できる病院だと考えます。患者さんは、医療、介護、生活活性化、おもてなしの心を求めています。リハビリで明日も頑張って元気になろうと思ったり、がんの末期で余命3ヶ月と言われても明日も生きてみようかなという気持ちを持ってもらうこと。それが生活活性化機能であり、おもてなしの心です。そのためにはチーム医療が大切です。患者さんを中心とした情報をスタッフ全員が理解し、それぞれがやるべきことをやるということ。
ただし、医療職は単純作業ですから流されます。毎日今日の人生をどうやって過ごそうかを考えてください。考えることで人間は成長します。チームワークや新しいアイデアも生まれます。私はすべての職員が考えている組織が1番強いと思います。組織の方向が違う方向に行くような時には、ちょっと違うのではと言える組織こそが強い組織です。
また健育会は、医療をサービス業として捉えています。サービス業には、本質サービスと表層サービスがあります。本質サービスは、病気を治すなど患者さんにとって必要なサービスのこと。本質サービスを提供するには、医師、セスラビストなどの医療スタッフが必要です。患者さんは、医者には溢れる自信、ナースには安心感、セラピストには専門性を求めています。ですから、専門性を身につけて患者さんの治療に努めてください。一方の表層サービスは、接遇、みだしなみ、療養環境など実際に患者さんの気分を良くさせるサービスです。私は綺麗な病院に入院したいと思うので、理事長になって30年の間にグループの老朽化した病院をほとんど新しく建て直しました。
今年、健育会グループは創立70周年を迎えました。この10年で健育会グループは飛躍的に拡大しました。今後はさらに拡大すると同時に、患者さんの自然治癒力が芽生えるような医療サービスを提供していきたいと思っています。そこで「we are one team」から「our team」を掲げました。「we are one team」は、スタッフがリーダーの言うことをしっかりと聞くチームですが、「our team」は、職員全員が考えて経営参画するチームです。こうした経営基盤の病院を作るため、今年から予算編成も変え、一部では病棟全体の目標に対して全ての職種が貢献できているかを上司が考え、本部スタッフが3ヶ月に1回行ってチェックしています。今後、医療費抑制があっても健育会は強い基盤で地域医療を支えていきます。