次に来年度の健育会グループの方針と、医師の皆さんに担っていただきたい役割についてお話しします。
健育会グループでは、医師の役割は「医療における倫理の番人」であると、常々お伝えしています。これは、先生方それぞれの倫理観に反する医療行為は決して受け入れないという毅然とした姿勢で対応することを徹底してほしいということです。この軸は決してぶらさないでください。
私たち健育会グループは、すべての職員が「Our Team」の一員であるという自覚を持って日々取り組んでいます。
その中で、医師の皆さんは、今一度「医療チームのリーダー」であるという意識をしっかりと確立してください。
周囲の期待に応えられるよう、高い倫理観をしっかりと持ち、たとえ専門外であったとしても患者さんの状態をしっかり把握する、チームを牽引する姿勢が皆さんには強く求められています。
健育会グループでは「安全」「経営」「愛情を持って親身な対応」を大切にしています。
皆さんが目指すべきは、患者さんから最大限に信頼されるような対話ができる「Patient First」な振る舞いです。「Patient First」とは、常に患者さんの尊厳を考えるということです。治療によって命を救い、病気を治すことには全力を尽くし、それ以外の時間においては、どうすれば患者さんの尊厳をきちんと保てるかを考えて診療に当たってください。
「愛情を持って親身な対応」は、患者さんの幸せホルモンを出すことですが、幸せホルモンには主に3つの成分があります。
そのうちの2つ、ドーパミンやセロトニンは、主にナースやセラピストが、患者さんと丁寧な言葉で接したり、スキンシップを行ったりすることで生まれます。
それに対し、幸せホルモンの最後のひとつ、オキシトシンは、医師である皆さんが生み出すべきものです。
オキシトシンは、ただ病室で対話をしているだけでは生まれません。例えば、病室を後にするときに、再度自分の説明が理解されているかどうか患者さんの顔色や様子を伺ってから立ち去るといった、ささやかな振る舞いが重要です。
このような行動によって、患者さんは「この先生は、私のことをきちんと見てくれている」と感じ、心の底から安心し、オキシトシンを生み出します。
常に患者さんの病態を的確に把握し、その状態をご本人にもご家族にも、医師の口から自信を持って説明できるよう、全力を尽くしてください。その姿勢こそが、揺るぎない信頼を築く礎となります。
また、患者さん一人ひとりの気持ちに寄り添う上で、健育会グループは回復の見込みがない患者さんへ対する「出口のない延命措置」という重い問題にも踏み込んでいきます。
私たちは、ご本人の尊厳が最大限に尊重され、患者さんが苦しむことなく最期を迎えることができる治療のあり方を追求していきたいと考えています。
この実現のためには、皆さんと患者さん、そしてご家族との間に、強固な信頼関係がしっかりと構築されていることが不可欠です。
皆さんには、ご家族に誠意をもって提案できる医師になっていただきたいと思っています。そのためにも、日頃から患者さんを第一に思い、行動し、ご本人にもご家族にも心から信頼されるような医師を目指してください。

