Vol.212 「第14回TQM活動発表セミナー」が開催されました。

前半最後の発表に続き、座長の丹羽看護部長から各演題について下記の講評をいただきました。

演題1は、施設におけるご逝去が増え、看取り介護加算を取得している中で、看取り介護内容の理解を深めたいということから活動に取り組まれました。対象者全員が、看取り介護の理解を深め、目標を達成するという素晴らしい成果でした。その中で、自主的にカンファレンスに参加する職員が増えて、看取り介護加算の重要性の理解も進みました。最終目標は、看取り加算を取得しているので、看取りケアの充実です。今後も、歯止めの管理の中に新しい入職者の教育もしっかり盛り込み、ご本人やご家族の思いを取り入れたケアや看取りカンファレンスの充実に取り組んでいただけたらと思います。

演題2は、皆で食べるおいしさや楽しさを提供したいということから業務ミス改善に取り組み、目標を達成されました。リハ部の中で何度も話し合って仕組みを作り、波及効果でも患者さんから喜びの声が聞かれ、患者満足の向上にもつながった素晴らしい取り組みでした。ただ、この取り組みを通して、食事量の増加はどうだったのか、食事動作の向上、自食に対する耐久性の向上などについても、客観的な評価の中に入っていると良かったのではないかと思います。今後も病棟スタッフと一緒に、集団食事を継続していただきたいです。

演題3は、透析中の抜針は重大事故につながるため、年1回といえども緊急性が高いということで、取り組まれたテーマでした。目標を、透析時の抜針事故を0にするということでしたが、操作ミスが1件発生してしまい達成できませんでした。しかし、更に対策をされたことは良かったと思います。ただ、現状把握の中で、インシデントの内容をもっと深く掘り下げると、その操作ミスに関して何か出てきたのではないでしょうか。また、有形効果の中で、テープの強度などを測定したのは良かったのですが、今回はテープの固定と素材の見直しということから入っていました。コストの削減効果はどうだったのかということも明らかにすると良かったと思います。

演題4は、従来の朝食のパンは、ジャムを変えただけであったため、パンの献立のバリエーションを増やし、豊かなパン食の提供に取り組まれて、目標を達成されました。色々なパン食を提供するために、それまでできていなかった要因を分析され、業務量が増えることから、デイケアがない日曜日に提供する、作業者の変更や食札の工夫など、対策をしっかり立案されていました。結果、パン食に関する入居者さんの満足度が向上され、素晴らしい取り組みでした。今後も、入所者さんの満足向上に取り組んでいただけたらと思います。

演題5は、刻み食は患者さんが食べやすいように工夫して提供されていますが、患者さんからは何を食べているのか分からない、食べにくいという声があり、取り組まれたテーマでした。実際には、まだ刻み食を提供している病院・施設があり、同じような問題が起きているのではないかと感じました。今回は、新たにソフト食の提供を取り入れて、課題達成型で取り組まれました。その中で、しっかりと成功シナリオを考えて実践し、目標を達成。ただ、効果の確認アンケートの中で、残念ながらソフト食の見た目が刻み食と変わらないという結果になりました。追加対策として見た目の改善にも取り組んでおり、素晴らしいことだと思います。今度もソフト食の種類や回数を増やして更に改善にして、患者さんに安全で楽しい食事を提供してください。

演題6は、診療報酬改定で施設類型加算型を算定してみるとばらつきがあり、安定的に算定するための取り組みで、施設の方針に基づいたテーマでした。課題達成型で取り組み、ベッド回転率と退所後の訪問指導マニュアルを攻め所として、成功シナリオや仕組みを考え、中間評価をしながらしっかりと取り組みを確立し、目標を達成しました。今後も、このTQM活動で確立した仕組みをしっかり定着させて、加算型の維持に努めていただければと思います。

演題7は、スタッフ介入中のセンサーをオンのままにするということで、私がいる花川病院ではスタッフ介入中の電源はオフにしているため、入れ忘れというインシデントが発生しており、大変注目しました。オンのままだと不要なセンサーコールが鳴り、職員が確認するということを減らすための取り組みでした。今回は、自動復旧システムを導入しながら、ナースコール作動が48%減になり目標達成しました。ナースコールが減り、スタッフの確認業務が減少して良かったと思いました。ただ、48床で25台のセンサーの稼働は、妥当でしょうか。センサーは、必要な人に使用しているという考察はありました。しかし、もう一度患者像やセンサーの使用基準、スタッフの配置などをしっかりと分析して対策をすると、更に高度な検証につながったのではないかと考えます。

演題8は、浴槽入浴ができていない入居者さんがいるということで、全員を浴槽入浴させたいというテーマに取り組まれました。個々の入居者さんの入浴方法を見直し、その方法を掲示するなど、分かりやすくして目標を達成されました。週3回入浴されているということは、素晴らしいと思いました。入居者さんを安全にゆっくりと入浴させることは、満足向上にもつながるので、これからも入浴方法を見直しながら、この活動を続けていただきたいです。

演題9は、整容の中の手の爪切りをテーマにしました。ケアポート板橋さんのTQM活動はいつも素晴らしくて、今年はどんなテーマに取り組んだのか楽しみにしていました。手の爪の長さを、科学的根拠から1.5mm以上が伸びているとしっかり定義し、目標を設定されました。その点は素晴らしかったですし、テーマ設定や現状把握、要因分析などもとても丁寧に行われており、参考になりました。対策は、勉強会や知識の向上、道具の用意など入所者さんや職員の安全に配慮され、目標を達成。ひっかき傷や手のひらの自傷行為が減り、今年も素晴らしい取り組みでした。

演題10は、病棟から在宅へ、看護と看護の連携はとても重要です。今回は、病棟看護師と外来看護師の連携というテーマに取り組まれました。病棟から外来への必要性は感じているものの、実際はできていないということで、しっかりとした申し送り手順や要点、環境を整えるなど、とても参考になりました。目標を達成され、患者さんは外来通院を在宅生活で安心して継続できるようになりました。地域における看護連携や継続看護と言われていますが、身近な院内から看護連携を広げていくことは素晴らしい取り組みだと思います。