Vol.241 【特別対談】いつからでも人は変わることができる――折茂武彦選手に学ぶプロフェッショナルの極意

才能ある人間だけがトップにいけるのではない

現役時代の折茂選手

―知り合って10年、印象に残っていることはありますか?

竹川:

以前に折茂さんは、1日に1食しか食べないとおっしゃっていましたよね。それを何十年も続けられる…非常にストイックで、プロとしてのこだわりを感じました。

折茂:

実は、大学を卒業してから引退するまで一切体重が変わっていないんですよ。体を大きくすると、ケガによる負担も増えるので、自分に必要な最低限のトレーニングだけに注力してきました。しかし40歳を過ぎると、同じ練習をしても体重が落ちない。食事をコントロールするしか方法はなかったので、1日1食で体重調整をはかりながら現役時代を続けました。

竹川:

話を聞いたときは感動しました。超一流のプロを何十年も続けるのは、自分を律する強い精神力が必要なのだと。

折茂:

現役時代は、すべて若手と同じ練習メニューをこなしました。キャリアや年齢に関わらず、勝負では一緒の土台に乗る同じプロです。さすがに47歳にもなるとしんどかったですけど(笑)。
僕は自主練習をしませんでした。与えられた時間の中でどれだけ自分が集中して全力でできるか、またイメージできるかが一番。「練習のための練習」ではなくて「試合のための練習」。試合のためにどれほどの準備期間を設けて、どんな準備ができるかによって成果を出せると思っています。

バスケットボール選手として、私は特別体も大きくないですし、特別な能力や才能があるわけではありません。それでも何度か日本一になれましたし、日本で一番点数を取った記録も持っています。10年以上、日本代表にも選ばれました。才能がなくてもしっかり考えながら行動する。決して才能がある人間だけが上に行けるわけではありません。