1日目のシンポジウムの終了後は、10分の休憩を挟んでNPO法人森は海の恋人理事長の畠山重篤先生による特別講演「森は海の恋人 人の心に木を植える」が行われ、座長は大会長の勝又院長が務められました。畠山先生は、県立気仙沼水産高校を卒業後、家業の牡蠣養殖業を継ぎます。そして、海の環境を守るためには海に注ぐ川、さらにその上流の森を守ることの大切さに気が付き、漁師仲間と「牡蠣の森を慕う会」を結成。1989年から気仙沼湾に注ぐ大川上流部で、漁師による広葉樹の植林活動「森は海の恋人運動」を行っています。同時に子どもたちを牡蠣養殖場に招待し、海の体験学習を実施。2009年に牡蠣の森を慕う会を発展させ、森は海の恋人を設立します。しかし、東日本大震災で牡蠣養殖施設などの全てを失ってしまいました。それにもかかわらず被災直後から、震災後の自然環境を生かした地域作りに取り組まれています。
畠山先生の著書『森は海の恋人』は、現在英訳され日本の中学・高校の英語の教科書に掲載されています。講演では、この英訳に関して大変な秘話も披露されました。森は海の恋人は「The sea is longing for the forest」と英訳されています。この中に“long for”という熟語を使ったのは、1994年に美智子皇后陛下(現上皇后)からのアドバイスがあったからなのだそうです。畠山先生は、同年に朝日森林文化賞を受賞されました。同賞の受賞者は、皇居に招待され、天皇皇后両陛下に謁見することができます。その時に、美智子皇后陛下と和歌に関する話で盛り上がり、その後メッセージをいただくことに。そこで、手紙で森は海の恋人にふさわしい英訳を尋ねたところ、数日後に宮内庁からFAXが届き「long forという熟語を使ってみてはいかがでしょう?」というメッセージが記されていたとのことでした。
『森は海の恋人』は、今年5月にフランス語に翻訳され、パリでも出版されました。畠山先生は、自然の繋がりと人と人との繋がり、この2つを両輪にしなければ何事も長続きはしない」と言います。そして、「人の心の持ちようで何事も良くも悪くも転がり、時代が変わってそのことだけは変わらない」と説きました。畠山先生の語り口はとても軽妙で、講演中にスライドなどは一切使用しません。今の時代には、かえってそれが新鮮に感じられ、大変印象に残る講演でした。
1日目のプログラム終了後は、仙台サンプラザクリスタルルームで交流会も開催されました。冒頭では、大会長である石巻健育会病院の勝又院長のあいさつがありました。
たくさんの方に交流会に出席いただき、大変嬉しく思っています。先ほど牡蠣の養殖家の畠山先生に特別講演をいただきましたが、ちょうど今牡蠣が食べ頃になっています。その他、仙台牛や牛タンなど、東北地方を中心とした色々な料理を十分に食べて英気を養っていただき、二次会でも震災復興に援助いただいて、また明日皆さんと学びたいと思います。