TQM推進協議会の安藤理事長
石巻健育会病院の勝又院長
安藤理事長のあいさつに続き、石巻健育会病院の勝又院長が登壇。大会長あいさつとして、下記の話をされました。
石巻健育会病院の設立は1991年。石巻港湾病院として設立され、東日本大震災を経て新築移転し、石巻健育会病院に改名しました。回復期リハビリテーション病棟、療養病棟、一般病棟などを合わせて168床あり、職員数は267名です。
東日本大震災発生時、132名の患者さんが入院中でした。また、病院職員や外来患者さん、患者のご家族、保育園児など合わせて124名もおり、計256名が病院で津波に遭うことになります。この時、垂直避難を行い、1人の犠牲者も出さずに済みました。その後、入院患者さんは5階の食堂へ移っていただき、残った全ての寝具を使って雑魚寝で入院生活を続けるという有様でした。病院の近隣の民家は全壊し、病院1階は天井まで浸水。1階には、事務室やリハビリテーション室、外来リハ室、検査室、放射線室、厨房、医療相談室などがありましたが、全て失われることになりました。
震災発生3日後の3月14日、初めて本部からの支援物資が到着します。公の支援物資の到着は発生から1週間後だったので、かなり早い時期でした。中には、雪の日にヘリコプターで届いたこともありました。本部やグループ施設から物的、人的支援を受け、震災の1カ月後には2階病棟を改修し、外来診療を開始します。さらに、8月1日には1階と2階の機能を回復させ、入院診療も再開することができました。このような民間病院の震災からの迅速な復旧は、ハーバードビジネススクールのビジネスモデルに選ばれ、研究されております。
健育会は今年で66年目を迎え、伊豆半島から北海道までの主に太平洋側に広がる、慢性期医療と介護を中心にしたグループです。石巻には石巻健育会病院に加えて、ひまわり在宅サポートグループ、介護老人保健施設 しおんの3施設があります。グループ全体で、10の病院と12の介護施設、42の介護事業所を持っております。入院病床数は約1300床、職員は約3300人です。
健育会内では、大きな研究発表会が3つあり、その内の1つが「TQM活動発表セミナー」です。まず4月にTQM活動のチームを立ち上げ、12月に地区大会を開催。この地区大会で選抜されたチームが、翌年2月に開催されるTQM活動発表セミナーに参加します。2018年度は71チームが活動を開始し、TQM活動発表セミナーでの発表は18演題でした。石巻健育会病院では、2017年度が7チーム、2018年度は9チームが活動しておりました。『医療の改善活動』全国大会では、健育会グループから2017年度が1チーム、2018年度は3チームが発表しました。各チームは、発表をするために地区大会の前に1回PDCAサイクルを回しており、翌2月までにもう1回、全国大会までは時間があるので何回か回しています。
グループ内のTQM活動発表セミナーでの発表は2017年度が17演題、2018年度が18演題であまり変わっておりませんが、今回の全国大会での健育会グループの発表は昨年より大きく増えています。これは私が大会長を務めるということで、たくさん発表をすることになりました。石巻健育会病院は、TQM活動を10年以上続けており、定着化に関心を持っています。現在定着を目指して活動しているテーマは、次の3つです。まず「最終与薬場面における確認手順の定着を目指して」。これは、誤薬防止のための活動で、定着したのではないかと思っています。次に「療養病院における手指衛生遵守率の向上」。療養病院は、高齢の方や栄養状態の良くない方、免疫状態が悪い方などが入院しています。リハビリや介護をするということは、人とのコンタクトがあります。ですから急性期病院以上に、手指衛生を守っていかないと危ないという発想から始まったようです。3つめが「ケアワーカーによるオムツはずしプラン立案率の向上」。摂食と排泄は人間の尊厳にかかわるため、オムツをできるだけ外そうという試みです。そのためのプランを100%立てれば、おむつはけっこう外せるということがわかりました。これらが、現在定着している、もしくは定着しつつある活動になります。
今大会には、東北各地からTQM活動未経験の方も、たくさんご参加いただいているのではないかと思います。そこで私がアピールしたいことがあります。まず、職員数が少なくてもTQM活動はできるということです。方法を学べばわかります。それほど難しいことではありません。ただし、着眼点と題材選びに関して、ある程度経験して慣れる必要があると思います。今回は、改善事例発表137演題やシンポジウム「リハビリテーション生産方式」と「看護生産方式」に加えて、牡蠣の養殖家であり京都大学フィールド科学教育研究センター社会連携教授、NPO法人「森は海の恋人」理事長の畠山重篤先生に「森は海の恋人 人の心に木を植える」という特別講演も行っていただきます。
仙台には、皆さんご存知の伊達政宗像の他に、「サン・ファン・バウティスタ号」もあります。これは、日本で初めて作られたスペイン船です。1611年に三陸で大地震があり、その復興のために伊達政宗がわずか2年で建造。太平洋を渡り、最終的にはローマ教皇のスペイン国王に謁見する使節団を派遣しました。交易によって復興させたいという希望があったと伝えられています。伊達政宗のビジョンと実行力、迅速性や日本に帰ってきた使節団の忍耐力と責任感などは、TQM活動を行う上で重要になると思います。今の時期の仙台は、栗駒山の紅葉をはじめ見どころが色々あります。グルメに関しても、仙台牛や牛タン、三陸の魚介類、蔵王のそばなどたくさんあります。皆さんが、学会の活動以外で、そうしたことを楽しんでいただくことが震災復興の助けになります。大いに英気を養っていただきたいと思います。