Vol.207 第21回フォーラム「医療の改善活動」全国大会 in 仙台が開催されました。

大会は、まず石巻健育会病院の並木乃輔マネージングディレクターの開会宣言があり、その後に医療のTQM推進協議会の安藤廣美理事長が、下記のようなあいさつをされました。

2006年の第1回大会も、この会場で開催しました。今回は、石巻健育会病院の勝又先生によって運営されます。医療の改善活動は西高東低ということもあり、その後東北で開催する機会はありませんでした。しかし「再建に取り組んでいる東北で」という会員の熱意に応えて、今大会は再び仙台で開催することになりました。

改善活動においては、管理者の責任やリーダーシップが大変重要です。ナポレオン・ボナパルトやチャールズ・ダーウィンは、リーダーとして国や調査隊を率いていました。私がスリランカでお会いした改善活動を指導している先生は「組織にはマニュアルが存在する。そのマニュアルのせいで方針や課題が、下に伝わらない。逆に、下のスタッフたちの提案や悩みは、上に伝わらない。こうした状況が続いており、スタッフのいらだちや苦しみが、組織が円滑に回るのを妨げている」と話していました。

では、管理者の責任が何かというと、品質マネジメントシステムに関する規格であるISO9001の第5章に規定されています。まず、管理者は会社を改善する責任があるということ。次に顧客を重視すること。我々にとって、それは患者さんです。そして品質方針。その方針を評価したアウトカムをしっかりと分析して、良い部分と悪い部分を把握するということ。主にこうしたことがあります。

2億数千年前にネズミのような哺乳類だった我々が、爬虫類に打ち勝った理由の1つは、大脳新皮質の発達によって考える力を培ってきたからです。我々の祖先は、700万年前頃から立位歩行するようになって脳が発達し、他の哺乳類とは異なる進化を遂げました。我々が他の哺乳類と違うのは、前頭葉の発達が顕著だということです。前頭葉の発達によって、好奇心を持って外からの情報を取り入れるようになりました。同時に、ハンティングにおいてどうすれば成功するか方向性を示すリーダーシップも備わります。さらに、問題を解決する能力も身に付け、これらが我々の進化に重要な役割を果たしたのです。

これらの能力は、ISO9001が定める管理者の責任を果たすためにも役立ちます。アウトカムを評価して出した品質方針が、ビジョンになります。ビジョンが無ければ物事は上手く進まないため、これを示すのはリーダーの責任。そして、顧客重視=患者や社会をみて情報を得ることが、ミッションになります。ミッションがあることによって、我々のやることに価値=コア・バリューが生まれるのです。続いて、コア・バリューにストラテジック・フォーカスをすると戦略目標を立てることが可能になり、それを達成するための課題や問題がわかってきます。それらの課題などを乗り越えようとするのがQC活動。そのために、品質方針を示すリーダーとそれを受けてQC活動を行う我々が、相互にコミュニケーションを図っていくということが言えます。

我々の目的は、物ではなく新しい生産システムの創造です。病院は、健康状態や回復プロセス、サステナビリティといったことをアウトカム評価しなければいけません。QC活動は、院長を含めて病院の全員がやっています。しかし、アウトカム評価が無い状況で個別にPDCAサイクルを回しても、全体に反映されるまでに時間がかかります。しかし、自分たちの現状についてのアウトカム評価を行い、そこから方針を出した上でQC活動を行えば、それぞれが同じスピードでPDCAサイクルを回したとしても、組織としてのスピードはもの凄く違う。リーダーとスタッフが一緒になってQC活動に取り組んでいくことが、今後の組織にとって重要だと思います。ナポレオンは「リーダーはみんなに希望が与えることが必要だ」と言いました。「自分たちが良いと思う方向に、リーダー自身が変わってください」というのがダーウィンの言葉です。