それから妊婦さん、地域の助産師さんたちも被災して動けなかったため、私たちの病院で分娩し、通常5日のと
ころを3日で退院してもらうなどしました。今振り返るとよくやったなと思います。透析患者さんも全員避難し
てきました。
この震災対応で発揮できたことは何かというと、一つは病院機能です。いつもやっていることを発揮できたこ
と。もう一つはチーム医療です。みんなの力で患者さん一人一人のために尽くせたと思います。
ここでチーム医療の話になります。チーム医療の定義とは「患者さんに対して医療専門職が連携して対応する」
ということ。これはチーム医療推進協議会が提唱している定義です。
震災時の一例を挙げるとすると、“処方”です。赤十字病院の患者さんもそうでない方も、t津波の影響により薬
が流されてしまったり、薬を持たずに避難したりなどで、薬の処方を希望する方が殺到しました。最初は外で渡
していましたが、寒いので処方専用窓口を開設して、入場口で整列して順番に処方しました。
チーム医療がうまく機能を発揮するには、患者さんを中心に考えることと、もう一つはフラットな関係が重要で
す。医師が上の立場ではなく、それぞれの職種が細胞の一つひとつのように力を発揮すること。しかし、これが
なかなか難しいことでもあります。
その一方で発揮できなかったことが3つあります。
一つは他の病院や診療所の被害状況を全く把握していませんでした。自分たちのやることで精一杯でそれどころ
ではなかったのです。一番被害が大きかった石巻市立病院では、胃の切除の手術をしていたときに地震が起き
て、切除したまま腹を閉じて終わった…という事態があったことも、後から知りました。
次に市役所との情報共有です。避難所がどうなっているのかさっぱりわからない状況で、避難所からどんどん患
者が送られてきました。自主的にアセスメントし、避難所の状況を確認したところ、避難者が5万人ちかくい
て、避難所が300ヶ所以上あることを知りました。これを最初から市役所と連携していれば何も問題ありません
でした。後から振り返ると、行政との連携が薄かったなと反省しています。
最後の3つ目は、要介護者の対応です。病院ですので、私たちの対象者は患者さんの医療の準備はしてきました
が、施設が被災したため病気ではない介護者も運ばれてくるのです。患者さんと要介護者さんが混在し、増えて
しまったため、化学療法室を要介護者の方たちに使用してもらいました。
しかし医療が必要なわけではないため、患者の定員も限られており、県外の秋田や山形、遠くは北海道などの施
設に転院してもらいました。その後は福祉避難所やその要介護者を受け入れてくれる避難所を市が作ってくれま
したが、こうしたことから地域広域連携が必要と感じました。医療、介護、福祉。医療だけではどうにもならな
い、地域でうまく連携してやらなければなりません。そこで、石巻地域病院運営協議会を作ったのです。石巻市
長、東松島市長、女川町長など、それから石巻の11病院の経営責任者および事務責任者、看護部長にも参加い
ただき、石巻地域の医療事情を考えましょうという目的で実施しました。