2018年3月10日に行われる看護・リハビリテーション研究会は、今年で12回目を迎えます。今回の理事長トークでは看護研究会のご指導を長年いただいている、横浜市立大学 医学部 看護学科 教授 叶谷 由佳先生(以下、敬称略)と健育会グループ看護部のサポートに携わっている森智美さんの2人に参加してもらい、健育会グループの看護研究これまでと今後への期待について話しました。
理事長叶谷先生との出会いは20年くらい前になるでしょうか。私が「医療の質の向上と運営の効率性が共存する新しい病院運営のあり方を提案し、日本の医療サービスの発展に貢献したい」という強い思いで株式会社ヘルスケアシステムズの立ち上げた際、入社して頂いたことでしたね。
叶 谷はい、そうです。当時、私は東京大学大学院の医学系研究科健康科学・看護学専攻博士課程に在籍していて、「マグネットホスピタル」などの研究をしていました。「マグネットホスピタル」とは、患者さんから支持され、また看護師など医療職の離職も少ない、まるで磁石のように人を引き付ける病院のことです。そのような病院を実現するためにはどのような看護管理や病院経営が必要なのかを研究し、その研究を通じて学んだことを生かして働くことができれば、と職を探していた時に、お世話になっている先輩からヘルスケアシステムズという高い志を持った会社が立ち上がるという話を聞いたのがきっかけでした。「医療はサービス業であり、サービスを提供するのは‘人’である」「その‘人’がプロフェッショナルに集中できる職場環境を整えることが大切である」というような理事長のお考えがヘルスケアシステムズを紹介するパンフレットに書かれていたと記憶しています。「まさに自分の考えとマッチしている!」と感じたことがきっかけで、入社させていただきました。
理事長叶谷先生には、当時、各病院の看護管理向上に向けて精力的に働いていただいたように記憶しています。もう、叶谷先生がヘルスケアシステムズで働いていたことを知る職員も少なくなったと思いますが、その頃の思い出で印象深いものはありますか?
叶 谷本部の人間として、現場の一つ熱川温泉病院に入らせていただいたのが印象的でした。その当時の熱川温泉病院では、なぜか全身に皮膚疾患のある患者さんが多く、軟膏などを塗るケアにすごく時間がかかっていたのです。それを間近で見て、お茶を使った’部分浴’が皮膚疾患に有効であるという研究があったのを思い出して改善に結びつけばと伝えたところ、病院の皆さんが「患者さんの中には全身が痒いという方がいらっしゃるので、入浴剤のように湯船にお茶がらを入れたらどうか」と発想し、ディレクターが周辺の旅館に声がけしてお茶がらを集め、それを看護助手さんが乾燥させて、日本手拭いで手縫いで作った袋に入れ、入浴時に患者さんの浴槽に入れたんです。すると、緑茶に含まれる成分によって、患者さんの皮膚疾患がみるみる改善され、肌が綺麗になりました。患者さんは痒みから解放され、また看護師や介護職のケアにかかる負担も減りました。そして、前年の同月とその年の薬の薬のコストを比較すると、やはり下がっていました。
この事例から患者さんに効果的なケアを行うことが、働くものの負担減に繋がるだけでなく、コストも削減されて経営改善に繋がるという結果が得られ、当時、このことを雑誌や海外の学会でも発表させていただきました。そして何より個人的には、現場で働く皆さんの「少しでも患者さんのために良いことをしたい」という思いからくる発想力と、行動力を目の当たりにする貴重な経験をさせていただきました。
私は、ヘルスケアシステムズにいた後にまた研究職に戻ったのですが、その時の体験はその後に生きていると感じています。