先日、健育会グループ 第6回看護・リハビリテーション研究会を開催し、各病院・施設から約138名 の医師・看護師・セラピストが集まりました。
看護・リハビリテーション研究会とは、研究活動を通じて論理的思考・統計的な視点を持って業務を行い、質の高い医療の提供を目指すものです。年々、そのレベルもアップしており、今年も20もの演題が各病院・施設から発表されました。
そして今年はこの研究会の機会に外部講師として医療法人財団夕張希望の杜 理事長 村上智彦先生をお招きし、『夕張市における、支える医療の実践』というご講演を賜りました。
夕張市は、深刻な財政難から2007年には事実上財政破綻しています。そのような自治体で民間化された市立病院の経営再建と地域医療継続のために夕張市に赴任したのが村上智彦先生です。しかし、ご講演での村上先生は‘財政破綻の自治体で人生を賭して地域医療に取り組む医師’といういわゆる一般的な医師ではありませんでした。夕張市の市民の責任を辛口に語りながら、「健康は病院に行って守るものではない」と、健康診断の受診率をはじめとした市民の健康意識を高めることなど住民の医療に対する意識改革も含めた地域医療の再生についてお話しいただきました。
村上先生のお話の中で、心に残ったことが2つあります。一つ目は、患者と医師の関係です。
『「健康とは病気でないということだけでなく、「生き甲斐が有る」「好きなことができる」こと。WHO も健康を「単に疾病の存在しないことではない」と定義している。車に乗ると、交通事故に合う可能性が上がる。しかし、そのリスクも承知してみんな乗っている。人間はいつか必ず死ぬし、高齢者には必ず何か起る。事故が起る可能性があるから、出かけない、好きなものを食べさせない、ベッドで過ごす…それはどうか。人間は、食べたいもの食べて、やりたいことやれるのが幸せである。見守る医師や看護師がいて、万全の態勢の中、事故が起きると言うことは、それは寿命なのではないか。そして何かが起きてもそのように考えて頂ける日頃からの信頼関係づくりが大切である。」』
高い専門性を持った医療を施すことや安全性を追求することがイコール患者さんの幸せに必ずしも結びつかないと言うのは、私も日頃から感じていることです。私は常々、医師として大切なことは‘信頼’だと考えており、信頼関係が築けていれば「この病院・施設で看取って欲しい」と思って頂ける様になると思います。安全でなく安心を、医療・介護を通じて心の豊かさをも提供できるようになるには、信頼関係がとても大切であり、健育会グループの医師にも患者さんとご家族とそのような関係づくりを行って欲しいと考えています。そして2つ目は、看護師の役割です。