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- 田中
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国立と民間の違いもそうですが、私には急性期と慢性期という違いも大きかったです。急性期の医療は、時間の流れが早い。出来るだけ早く高度な医療を駆使して治療することが求められます。また、急性期では患者さんの年齢も様々です。
一方で、慢性期の患者さんはほとんどが高齢者です。ですから、病気といっても加齢による疾患がほとんどで、進んでいく疾患は少なく時間の早さは求められません。状態を維持し苦痛を取り除く治療、すなわちターミナルケアを通じて人生の質を上げて頂くことが治療の大きな目的となります。慢性期医療に関わりはじめた当初は、どこまで治療すべきなのか、という壁にあたり悩んでいました。そんな時伺った世田谷区立特別養護老人ホーム 芦花ホーム 常勤医 石飛先生の「老衰で死期が近づいている人に胃瘻等の延命のための医療行為を行うことは、本人を苦しませる虐待ではないのか」というお話はまさに心に響きました。
- 竹川
- 平成22年の医師研修会ですね。あの時は、高齢化社会における死の在り方、そして医療の在り方を考えさせられました。
- 田中
- 本当にそうです。最近、竹川病院で、このようなことありました。
Aさん(85歳・男性)という方が、脳出血で倒れられた後、リハビリ目的で竹川病院に入院されたのです。ご本人もご子息も医者というご家庭で、入院当初は病状悪化の際は高度医療による治療(急性期病院への転院)を強く希望されていました。
- しかし、入院する中で竹川病院の治療方針と接遇及び、医師・看護師・介護士、リハビリスタッフのチームワークのもと行われた非常に適切な治療に信頼を寄せて頂けるようになり、遂には「最期まで、是非この病院でお世話になりたいです」と言って頂けるようになりました。そして、Aさんを竹川病院でお看取りさせて頂きました。その後、49日の際にご家族が病院にお見えになり奥様からは「先生をはじめスタッフの皆様に本当に良くして頂き、主人はこの病院に入院させてもらって幸せだったと思います」と、泣きながら感謝の気持ちをおっしゃって頂きました。
この経験からも、患者さん・ご家族と信頼関係を築く大切さと、看取りも医師のやりがいにつながることを感じました。