>Vol.64
>理事長トーク
HOME

タイトルバー

お話しされる天野先生まず、お話いただいたのは、お父様の心臓弁膜症がきっかけとなり医師の道を志されたこと、工夫と試行錯誤の試行錯誤で進歩していた歴史の浅い心臓外科がご自身に合っており心臓外科医をめざされたことなどの他に、冠動脈バイパス術に込めた思いや、天野先生が取り組む心臓外科医療についても詳しくお話いただきました。心臓外科手術では、手術により劇的に病状が改善し、心臓手術後の患者さんは、心臓が原因で死亡することは珍しく、それ以外の原因で亡くなる方がほとんどで、心拍動下冠動脈バイパス術の優位性は明らかです。先生は年2回、術後の元気な患者さんとのゴルフコンペも行っているとのことでした。また先生は、心臓外科手術は適正な医療機関で、適正な時期にうければ必ずみんなが幸せになれる、とおっしゃっていました。そのために、心臓外科医が心がけることは、手術を「早く(早急に、素早く)、安く(費用負担軽減、無駄なく)、うまく(巧みに、美しい手術を)」行うことが大切だと、牛丼の「うまい、やすい、はやい」に例えてユーモアをまじえてご紹介下さいました。
また、後半は「医師としての社会貢献」として、医師に大切なことをお話下さいました。その中で、印象に残ったお話をご紹介したいと思います。

志の高い医師をつくるために大切なことのひとつは、一般教養の習得。

医学部を目指す理由として「偏差値が高かったから」「医者の息子だから」という人は多いように感じます。また、「日本の医療界の最大の問題点は、アメリカの医師に比べて、日本の医師は使命感が乏しいこと」であると、アメリカで長年臨床医としての経験を持つ医師が講演会で話していました。私も医師の息子として生まれ、当然のように医師を目指しましたが、正直はじめから医師としての使命感をもっていたかというと、そうではありませんでした。大学で様々なことを学び、そして病院で患者さんから感謝されることで、使命感が育ってきたと思います。つまり「学ぶこと」と「評価されること」で使命感は育てることができるのです。ですから、使命感とは必ずしも最初から存在するものではなく、育てることができるものだと私は考えています。

特に医師研修セミナーでは、一昨年は守屋淳氏に論語についてのご講演を、昨年はハーバードビジネススクール教授 竹内 弘高先生に「Are you a Wise Leader?」というタイトルでご講演いただくなど、一見、医師とは直接関係ないと思えるようなことを学ぶ機会を設けてきました。これは、健育会グループの医療職のリーダーとしての人間力を養う機会をつくりたいとの思いからでしたが、天野先生の「人文科学や自然科学、社会科学など一般教養を学び、それらと医学が密接に関わっていることを知り、他の領域の進歩など時代を考慮した解釈を深めることで短絡した思考を修正することができる」とのお話を聞き、通じるものがあると思いました。

研修会の様子

理事長トーク