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事例2
- 患者プロフィール
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年齢:80代
疾病:誤嚥性肺炎・認知症
入院目的:
急性期病院にて、誤嚥性肺炎治療後、廃用症候群となり療養目的にて当院に入院
- 経過
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入院当初より終末期の状況。急性期病院での肺炎治療中に嚥下機能はかなり落ちていたが、娘は「食べさせたい」という強い願いを持っていた。嚥下訓練、ミキサー食開始。数口しか摂れず、経管栄養も開始となる。誤嚥性肺炎を繰り返しているため、主治医は再度病状説明を持ち、現段階で「できる医療」について説明をし、家族に選択を委ねた。その結果、主治医も想定外に胃瘻を希望される。転院先にて胃瘻を入れたものの、肺炎治療のため絶食。転院から1ヶ月後に当院に再入院となる。その後も全身状態が悪く、胃瘻は使用できないまま当院にて10日後に死亡。
- ディスカッションポイント
- 家族が胃瘻を希望しないように主治医は説明できたか。
医師のディスカッション内容
- 最初の段階で人生の最終段階にあるということが、はっきりしている。そのことを事前にご家族を含めてお話ができていなかったのではないか。
- 娘さんが「食べさせたい」という強い願いを持っているのが、娘さんだけの自己満足なのか、今までの経過に何か罪悪感なのかなど、もっと把握して対処すべきであったのではないか。
- 現段階で「できる医療」の説明を行ったとあるが、「できる医療」をずらずらと並べて、「どれにしますか?」とご家族にいう、昔ながらのインフォームドコンセントが行われたのではないか。
- 「最善の治療はこういう治療ですよ」ということや、例えば「自分だったらどうするか」ということも含めて、少し誘導風になるのかもしれないが、きちんと話をしていければ、患者さんにとっていい結果が得られたのではないかという考えが話された。
長尾先生コメント
- 事例では、終末期である患者さんに経管栄養が開始になっていますが、「食べさせたい」ことと、「鼻から管が入る」ことは両立しにくいと考えています。
- 仮に経管栄養は既にやってしまった場合、経管栄養を中止するという判断もあると思います。これは日本老年学会のガイドラインに則って行います。経管栄養を中止すると、食べ出す例も経験した事があります。私の言った言葉ではありませんが「食べることは生きること、生きることは食べること」という言葉もあり、そのような話をしていきます。