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では、なぜ日本において三重苦(ご本人、ご家族、国)の延命治療が行われてしまうのでしょうか。背景には様々な理由がありますが、1つ目は「日本人の宗教観のなさ」が挙げられると思います。多くの日本人は宗教観を持たないために、ご本人やご家族の死を迎える準備ができていないのです。2つ目には、「医師への過度な期待」があると思います。日本人には「人には寿命があり、いずれ老衰で亡くなる」ということを受け入れる準備ができていないので、お医者さんなら、90歳でも100歳でも治してくれるだろうと、過度に期待してしまうのです。
人生の最終段階を迎える患者さん・ご利用者、その方のご家族に対し「専門家の見地に立ち、患者さんの現在の状態を正しく評価して、予後や選択肢をご本人やご家族にお伝えし、老衰であることを理解してもらうこと」そして「密なコミュニケーションをとり、その心に寄り添っていくこと」は私たち医療・介護に携わる者の大切な役割です。

「密なコミュニケーションをとり、その心に寄り添っていくこと」

私の思い描く病院・施設の理想の姿は、健育会グループに入院する患者さん・ご利用者、そしてご家族に「健育会グループの主治医にお任せします」「健育会グループの病院で看取ってもらいたい」と言っていただける病院・施設グループになることです。なぜなら、それが究極の信頼関係が築けた証だと考えるからです。ご本人、ご家族お一人お一人と日常の中でしっかりと信頼関係を築き、安心感や満足感を感じていただくことが、人生の最終段階にある不安や苦痛を和らげる手助けとなり、それが「この医師・スタッフに、この病院に、最期まで任せたい」という思いに繋がっていくのだと考えています。そして、そのリーダーシップは医療チームのリーダーである医師がとるべきであり、医師には信頼される人間力が求められます。不要な延命治療で患者さんのみならずご家族の不要な苦しみと後悔を生み出さないために、患者さんが平穏な死を迎えられるよう、医師が適切な方向へ導いていくことが必要なのです。

健育会グループのスタッフ

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