健育会グループでは、医療の質の向上について考える「メディカル・ディレクター」と経営をしっかり安定させる「マネージング・ディレクター」と、医療と経営のトップを分離しています。この2トップ制という管理体制は、私が西伊豆病院で院長だったとき、診療と経営の両立が難しいことだと感じたことから発想が生まれました。1996年当時、日経新聞(夕刊)のトップ記事となるほど、画期的なことでした。
はじめはメディカル・ディレクターとマネージングディレクターの意見が合わないことも多いのではないかと思っていましたが、当グループでは、お互いの立場を尊重しながら、良い成果に結びついています。
また、当グループではBSC(バランストスコアカード)という手法も取り入れています。この手法は、米国シアトルのスウェディッシュメディカルセンターとの共同プロジェクトで仕組みを構築しました。財務・医療の質・組織管理・教育研修・患者満足の5つの視点を複数の指標により数値化して業績を評価しています。これにより職員にも自分たちの病院の経営状態がわかりやすく示されるようになり、また、この結果が査定にもつながるため、職員の経営に対しての参画意識が目覚めてきたと思います。
そして、私、理事長自身が職員全員に約束することとして、経営理念があります。「仕事のやりがい」「一人ひとりの人生の夢」「医療・介護に携わるものとしての使命感」を職員に約束しています。特に、患者さんのために良いことをしようとしてトライしたことで何か問題が起こったら「私が責任をとる」ということを、常々職員に話しています。これにより、職員たちは失敗を恐れずに患者さんのために良いこと思うことに存分にチャレンジできるわけです。もちろん、全く問題が起らない訳ではありませんが、「私が責任をとる」と腹が据わっていると、的確な対応ができていると確信しています。その結果、顧問弁護士の先生からも、「グループの規模に比して医療訴訟が驚くほど少ない」とおっしゃって頂ける状態となっています。
このような経営が認められ、慶応義塾大学湘南藤沢キャンパスにおいて、大学と藤沢市と密に連携をとる病院をつくるということで現在準備をすすめています。実際に医学部附属と標榜するわけではありませんが、これは日本で初の民間による大学病院(大学と密に関係をもった病院)の運営と言えると思います。ここでは、「未病・抗加齢への取組み」として、健康寿命を伸ばすための研究を行う慶応義塾大学に、そのためのデータを病院で蓄積して提供していくという取組みを行っていく予定です。